こどもの体力運動能力低下について

「時間・空間・仲間がない」とよく言われます。
その通りだと思います。

ですが、幼稚園や保育園でも、外遊びなどで体を動かすことを大切にし、活動時間を確保しようとされています。
体操やスポーツ等さまざまな体育指導を取り入れているところもありますね。
こどもが遊べる子育て支援センターのような場所や、いろいろな遊具がある公園もあります。
スポーツ教室やスポーツ少年団では、週に3回、4回、何時間も活動しているところもあるでしょう。
時間も空間も仲間も、減少というより、内容・質が変化しているのかなと思います。

大人になると、滑り台を何回もしたい、ブランコやシーソー、ジャングルジムでもずっと遊びたい、という人はあまりいませんね。
(やってみると楽しいですけどね。)
こどもは高い所に登ったり、グラグラ揺れる物に乗ったりするのが大好きです。
体の揺れや回転、バランスをとることは、平衡感覚を刺激します。
これは運動発達に必要な刺激であり、こどもは自然とそれらの刺激を求めて動こうとします。

何か物があったら触ってみたい、叩いてみたい、投げてみたい、上に乗ってみたい…
飽きるまで、気が済むまでしたら次
おもしろそうなことを見つけたらまた次

さまざまな刺激、感覚や運動を求めて動きます。
新たなことに興味を持って、いろいろな運動や感覚を次々に経験することで、成長発達していくのですね。

こどもの時期に多様な運動を経験することの必要性は広く言われています。
ジュニア期のスポーツにおいても、ひとつの種目や動きに偏らないようにする、たくさんの種目に触れる。
これらの大切さは、何年も前から言われており、スポーツに関わる人にとっては常識だと思うのですが…
小さいときから野球。サッカー。ひとつの種目に打ち込むことが良し。日本ではそうなっていることが多いように感じます。

野球界、サッカー協会、各種団体でも、競技人口の減少や選手育成のために、さまざまな取り組みがされています。
プロ選手が野球教室をしたり、ティーボールやルールを変えた野球のゲームをしたり等
それらの内容も、幼児や小学生へのトレーニングとしてどうかと思うものばかりです。
だいたい野球をしていた人なんて、野球の練習ばかりしてきた訳で、プロだろうが何だろうが、幼少年期のトレーニングや指導については全く知らない・もしくは間違った考えの人が多いです。(高橋の主観です)そうではない素晴らしい指導者もいらっしゃいますが。

そして、それらの取り組みのほとんどが
「野球」の競技人口を増やしたい、「野球」の競技力を上げたい
という自分の競技のことしか考えていないものになっていると思います。

小さいときから、たくさんのスポーツに触れる
多様な運動スキルを身につける
もちろん好きなスポーツがあるなら取り組む
他の種目もしてみたいなら、2つでも3つでもやってみる
興味が変わったら、違う種目に変えてもよい
個人や種目にもよりますが、専門特化するのは、高校以降で十分です。

その方が結果として各競技の普及・活性につながると思います。
サッカーに負けないように
野球人口を増やしましょう
バスケットを幼児から普及させましょう
バレー協会でも対策を考えましょう
そんな風に考えても良くならないのでは。

「トップアスリート発掘・育成」等と言った事業で、体力測定や選抜テストもされていますが
結局、体が大きい、エネルギー系のパフォーマンスが高い、早熟型の子が選抜されやすく
生まれ月による影響や早熟傾向が有利になるような、偏りのある選抜・育成方法がされていると思います。

小学生のスポーツ団体での活動
野球だけではなく、サッカーもして、バスケットもして、体操もして、柔道もして…のように色々すれば良いのに
野球・ソフトボールのチームだから
毎回野球の練習
ランニングをして準備体操をして、キャッチボールをして、ノックをして、試合をして
素振りをして、腹筋・背筋をして、肩の筋肉を鍛えているつもりでチューブを引っ張って…

それで本当に高校、大学、それ以降でも活躍できる選手の育成につながっていますか。

サッカーや野球をしている子で
脚の筋肉がガチガチ、前屈で床に手が届かない、足裏全部をつけてしゃがめない、
腕をあげて(バンザイ)いくと耳より後ろまでいかない
肩が前に出て背中も丸まっている、腰も丸まっている・反対に骨盤が反っている、姿勢が悪い
そんな子がいませんか。

小学生の時から肩が痛い、肘が痛い、足が痛い…中学、高校で思い切りスポーツできませんよ。

自分の教室でも現在、足の怪我で1ヶ月ほど固定・安静になってしまった子がいます。
足関節に負担がかかるアライメント、足の状態だったので、怪我が発症する前に何とかできれば良かったのですが
トレーニングで改善、もしくは他の手段で予防することができなかったので本当に申し訳なく思います。
キャンプにも参加予定だったのですがキャンセルになってしまいました。
楽しみにしていた本人が一番がっかりしていると思いますし、一緒に行く予定だった同じ教室の子たちにとっても残念なことです。
故障によって、目標にしていた大会に出られない、スポーツを辞めないといけない。その子の人生に影響があります。

スポーツで故障させてはいけない。

もちろん競技を続けていく中で、競技力のレベルが上がるにしたがって、厳しいトレーニングで追い込むこと、故障と隣り合わせの状態にもなります。
無理をしてでも試合に出なければいけない状況もあるでしょう。
それがいつから必要なのかということです。

高校野球では
「野球は高校まで、卒業したら大学に行って勉強・社会人になって仕事。野球はしない。」
だから、痛みや故障があっても、無理をして試合に出る。肩肘が壊れてでも投げる。というようなことがあります。
考えは人それぞれ、その選手が自分で考えて納得しているなら結構です。
「野球は高校までで、卒業後は別のことに専念する。」という決意も素晴らしいことだと思います。
ただ、高校卒業後も野球が楽しめるように、ボールがもう投げられないような状態にはならないで欲しいです。
野球が大好きでしていたのでしょうから。
高校野球、高校での部活動は素晴らしいものでもありますが、そこがゴールの様になっている現在の日本のスポーツのあり方、指導や環境には問題があると思います。

大げさに言えば
今のスポーツの選手育成は
それぞれの選手が成長して階段をのぼるのではなく
横並びにふるいにかけられて、つぶれなかった選手が上に行ける、故障しなかった選手が生き残る
そんな形になっているように思います。

下手な子は下手なまま
同学年で上手い子(早熟型の子)が選ばれる、試合に出る
早くから試合に出ていた子は試合などの経験ができる
同学年の晩熟型の子は試合などの機会が少ないまま
そして次の学年へと進んでいく

小学生のスポーツ教室や少年団、中学高校の部活動を見ても
練習や試合の取り組み、選手の選抜や育成について、どこまで考えているのかなと感じます。
自分たちのような体育指導者、スポーツ関係者は、こどもたちに指導する責任をもって研鑽していかねばと思います。

高橋

☆スポーツ選手選抜・育成について、小俣先生の記事です。
『日本は、いつまで“メッシの卵”を見落とし続けるのか?』小俣よしのぶ(前編)


『早熟の子を「神童」と呼ぶ愚行、いつまで続くのか?』小俣よしのぶ(後編)



by hpf-tom | 2017-08-14 13:45 | 2017年度 | Comments(0)

たかはしあきらの体育学校(叶夢叶夢プロジェクト・コオーディネーション運動教室)ブログ


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